自社開発・委託開発の業務システムを、ChatGPT・Claudeにつなぐ方法

自社で開発した、または開発会社に依頼して作った販売管理・顧客管理・在庫管理などの業務システム。そのデータを、ChatGPTやClaudeに「今月の売上上位の取引先は?」と聞くだけで確認できたら、集計表を作る手間が減ります。この記事では、非エンジニアの担当者が、自社専用の業務システムを生成AIにつなぐための選択肢と手順、判断基準を整理します。

「AI連携」には3つの意味がある

「自社システム ChatGPT 連携」で調べると、性質の違う話が混ざって出てきます。最初に、自社がやりたいのがどれかを切り分けてください。

種類やりたいこと主な手段
① 社内文書を読ませるマニュアルや規程をAIに読ませて、質問に答えさせるファイル連携、RAG(文書検索)
② 自社サービスにAIを組み込む自社のアプリやWebサイトにチャット機能を付けるOpenAIなどのAPIを使った開発
③ 業務システムのデータをAIから使うChatGPTやClaudeの画面から、販売管理の売上や在庫数を聞く業務システムのAPIをAIの「接続先」として登録する

この記事が扱うのは③です。①は文書が対象なので、日々変わる売上や在庫の数字には向きません。②は自社のお客様向けの機能を作る話で、社員が自社データを聞く用途とは別物です。

Claudeの画面。「販売管理システム: 月別の売上を見る」を使用しました、と表示されたあと、今月(2026年10月)の売上上位3社(A商事・B工業・C物産)の10月売上・9月売上・増減額・前月比を表にまとめて答えている
実際のClaudeの画面(データはサンプル)。③のイメージです。販売管理システムの接続先を使って、今月の売上上位3社と前月からの増減を答えています。

つなぐために必要な4つのもの

③を実現するには、次の4つがそろっている必要があります。どれか1つでも欠けると、方法を選ぶ前に止まります。

  1. 業務システムのAPI:ほかのシステムがデータを取り出すための窓口です。ECサイトや会計ソフトと自動でデータをやりとりしているなら、APIがある可能性が高いです。
  2. APIの仕様がわかる資料:どの窓口で何が取れるかを書いた資料です。Excelの設計書やWordの資料でも、内容が書いてあれば手がかりになります。
  3. APIを呼ぶための鍵:APIキーやトークンと呼ばれる、合言葉にあたるものです。多くの場合、開発会社やシステム管理者が発行します。
  4. インターネットから届くこと:ChatGPTもClaudeも、クラウド側から接続先にアクセスします。社内ネットワークの中からしか使えないシステムには、そのままでは届きません。
  1. ChatGPT・Claudeクラウド側から接続先にアクセスする
  2. 接続先④ インターネットから届くこと③ APIを呼ぶための鍵(APIキー・トークン)
  3. 業務システム① API(データを取り出す窓口)② APIの仕様がわかる資料(どの窓口で何が取れるか)
図:つなぐために必要な4つのもの(①〜④)と、それぞれがどこに関わるか。どれか1つでも欠けると、方法を選ぶ前に止まります。

1〜3の確かめ方と、開発会社への聞き方は「自社システムにAPIがあるか確かめる方法」で詳しく説明しています。

ChatGPT・Claude側の対応状況(2026年10月時点)

ChatGPTもClaudeも、外部のシステムを「接続先」として追加する仕組みを持っています。この仕組みは、MCP(Model Context Protocol)という共通の規格に沿っています。MCPは、AIアプリと外部のシステムをつなぐための公開された規格で、公式サイトでは「AIアプリのためのUSB-Cのようなもの」と説明されています。利用者がMCPの中身を理解する必要はありませんが、AI側の設定画面や公式ヘルプにはこの言葉が出てきます。

ただし、使えるプランや設定できる人は、AIごとに違います。公式ヘルプで確認できた内容は次のとおりです。

項目ClaudeChatGPT
機能の名前カスタムコネクタ開発者モードとMCPアプリ
対象プランFree・Pro・Max・Team・Enterprise(Freeは1つまで)Business・Enterprise・Edu。Proは読み取り系の機能のみ接続可
追加できる人Team/Enterpriseでは、オーナーなど権限のある人Businessでは管理者・オーナーのみ。Enterprise/Eduは管理者が権限を割り当て
使える場所Web版・デスクトップアプリなどWeb版のみ(モバイルは不可)
接続先の条件Anthropicのクラウドから、インターネット経由で届くことリモートの接続先であること。社内ネットワーク内は専用の仕組みが必要

出典は記事末に記載しています。どちらも更新が頻繁なため、導入前に公式ヘルプで最新の条件を確認してください。特にChatGPTは、ご契約のプランによって使える範囲が大きく変わります。

プランごとの条件と設定の手順は、ChatGPTは「ChatGPTのプラン別:社内システムをつなげる条件と設定手順」、Claudeは「Claudeのカスタムコネクタで社内システムを使う手順」で詳しく説明しています。

4つの方法と、向いている会社

業務システムのデータをAIで扱う方法は、大きく4つあります。

方法内容向いている会社注意点
A. CSVで書き出して渡すシステムから表を書き出し、AIにファイルとして渡す月に数回だけ分析したい毎回手作業。最新の数字ではない。書き出した表の管理が必要
B. 開発会社に個別に依頼システムを作った開発会社に、AIとの接続部分を作ってもらう予算があり、書き込みや複雑な集計まで任せたい個別見積もり。仕様の打ち合わせから始まり、保守費もかかる
C. 社内のエンジニアが作るMCPの規格に沿った接続部分を自社で開発・運用する社内にエンジニアがいて、運用も担えるサーバーの運用、鍵の管理、API変更への追従が自社の仕事になる
D. 既存のAPIをつなぐサービスを使う仕様書と鍵を登録し、AIの接続先を用意してもらうまず試したい。エンジニアがいないサービスに鍵を預けることになる。データの扱いと権限を確認する

選び方の目安

  • まず効果を確かめたい:Aで「AIに聞いて役に立つ質問」があるかを試し、手応えがあればDかBへ。
  • データを書き換える操作(受注登録など)までAIに任せたい:BかC。誤操作の防止や確認の設計が必要で、個別の作り込みが向いています。
  • 見るだけで十分:DかC。読み取りに絞ると、確認すべき安全面の論点が大きく減ります。
  • APIがない:どの方法でも、まずAPIの追加開発が必要です(Aを除く)。開発会社への相談が先になります。

進め方の5ステップ

  1. 聞きたいことを3つ書き出す
  2. その答えがAPIで取れるかを確かめる
  3. 読み取り専用の鍵を用意する
  4. 実際のデータで答えを確かめる
  5. 少人数で2〜4週間使ってから広げる
図:進め方の5ステップ。各ステップの詳しい内容は下のとおりです。
  1. 聞きたいことを3つ書き出す
    「今月の売上上位10社」「この商品の在庫数」「先月から取引が止まった顧客」のように、実際に毎週誰かが調べていることを書きます。ここが曖昧だと、つないでも使われません。
  2. その答えがAPIで取れるかを確かめる
    仕様書で、該当するデータを返す窓口があるかを探します。わからなければ、書き出した3つの質問をそのまま開発会社に見せて聞くのが早道です。
  3. 読み取り専用の鍵を用意する
    最初は、データを見るだけの権限に絞った鍵を発行してもらいます。登録・更新・削除ができる鍵は使いません。理由は「安全チェックリスト」で説明しています。
  4. 実際のデータで答えを確かめる
    AIの答えと、システムの画面で見た数字を突き合わせます。期間の区切り(締め日)や、税込・税抜の違いでずれることがよくあります。
  5. 少人数で2〜4週間使ってから広げる
    使われた質問と、使われなかった機能を見て、接続する範囲を見直します。

費用の考え方

金額は会社ごとに大きく違うため、ここでは内訳の考え方を示します。

  • AI側の利用料:使う人数分のプラン料金です。ChatGPTで接続先を使うには、BusinessやEnterpriseなどの法人向けプランが前提になることが多く、個人向けプランのままでは使えない場合があります。
  • 接続部分を作る費用:B・Cの場合は、仕様確認、開発、テスト、本番への反映にかかる工数です。Bは開発会社の見積もり、Cは社内の人件費として考えます。
  • 保守の費用:業務システムのAPIが変わったときに、接続部分を直す費用です。見落とされやすく、Bでは保守契約の範囲に含まれるかを確認してください。
  • APIの追加開発:APIがない、または必要なデータが取れない場合の費用です。これがある場合は、全体の中で最も大きくなりがちです。

見積もりを比べるときは、「読み取りだけか、書き込みも含むか」「対象の機能はいくつか」「APIが変わったときの対応は誰がするか」をそろえて比べると、金額の差の理由が見えます。

よくある失敗

  • 社内ネットワークの中にしかないことに、後で気づく:AIのクラウドから届かないため、つなげません。最初に開発会社へ確認する項目に入れてください。
  • 管理者用の鍵をそのまま使う:何でもできる鍵は、誤操作や漏えいのときの影響が大きくなります。
  • 使える機能を全部AIに見せる:機能が多いと、AIが似た機能を取り違えることがあります。最初は聞きたいことに必要な機能だけに絞ります。
  • プランの条件を確かめずに始める:ChatGPTの個人向けプランでは接続先を追加できない、といった食い違いが起きます(ChatGPTのプラン別の条件)。
  • 大量の集計をAIに任せる:何千件もの明細をAIに足し算させると、取りこぼしや計算違いが起きやすくなります。集計はシステム側のAPIで行い、AIには結果の説明や比較を任せるのが安全です。

出典・参考

ChatGPT・Claudeの機能と提供プランは、2026年10月8日時点で各社の公式ヘルプを確認した内容です。変更されることがあるため、導入前に最新の公式情報をご確認ください。